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カメヤ鍼灸舎 のびのび
浜松にある ハリ・灸・手技療術の 東洋医学の治療所です

『リハビリの夜』を読んで

20100308dd0phj000008000p_size5.jpgこの本を読んだおかげで、
例えば、過緊張の状態がいかにできるかとか、
例えば、他者への触れ方、動かし方、接し方、などなど
とても参考になり、
人の動きに対する自分の考えも上書きされたのです。

身体感覚は言語化できるか、という問いを
以前ある先生にぶつけてみたことがあります。

その頃の私は鍼灸学校を出たばかりで、
鍼の得気にこだわっていて
たとえば鍼感をきちんと具体的に言語化している本が
少ないなと思っていたからでした。

その先生の答はイエスでした。
(沈黙されていたわけでないです)

『リハビリの夜』という本を読んでみた。

この本は、障害をもった側の身体感覚を
きちんと言語化した本である。

著者は、熊谷晋一郎氏。30代の脳性まひのドクター。
幼児期からの自らのリハビリ、身体の経験を著している。

詳しくは養老先生の書評があるので、
http://mainichi.jp/enta/book/hondana/archive/news/2010/03/20100307ddm015070012000c.html
こちらを参考にさえるといいのですが、
自分の感想など、以下に記しておきます。

著者は、自らの身体をこう説明する。

「私の身体は、『過剰な身体内協応構造』を持っている」と。
(ここでいう「身体内協応構造」とは、
生理学者・ベルンシュタインのいう
ひとつの運動指示で、たくさんの筋肉が
いっせいに協調的な働きをすることである。)

「運動目標が実現可能な範囲から外れている場合には、
『身体的な緊張_運動目標からの脱線_焦り_さらなる緊張_…』
という悪循環が回りはじめ、
(中略)「風変わりな運動」が徐々にあらわになっていく」
のだそうだ。

そして、著者の
「過剰な身体内協応構造」には「あそび」がないため
運動が調節されにくく、
しかも運動目標から外れていくことで「焦り」がうまれ
それが「さらなる緊張」を生むという悪循環に陥ってしまう、という。

これらは(程度の違いこそあれ)治療に来る「健常」者にも
起こっていることではないだろうか、と僕は思う。

また、著者はリハビリにおいての、
トレイナーとトレイニーの関係にも言及する。

「トレイナーは私の体に「健常な動き」を与えようとして、
さまざまな関わり方をした。」として
その関係を以下の3つに分類する。

A 互いの動きを <ほどきつつ拾い合う関係>
(トレイナー(他者)が物理的に介入することで
受動的に「ゆっくりと」ほどかれる)

B 運動目標をめぐって <まなざし/まなざされる関係>
(トレイナーはより「健常の動き」に近いものを選んで
実行するよう仕向ける。が、また体がこわばる)

C 私の体が発する信号を拾わずに介入される <加害/被害関係>
(たとえば、「調和のない暴力的なストレッチ」)

これらも例えば、運動器の不具合で来られた
患者さんと治療家との関係に
置き換えられるかもしれない、と僕は思う。

さらに著者がすごいと思うのは、
一人暮らしや仕事をはじめるなかで
「身体内協応構造」を拡大解釈させながら、
モノや人との「身体外協応構造」に気づき
世界と自分との間合いというか、距離感を
実践していったところだと思う。
ここが生きてゆくうえで
とても大切なことなんじゃないだろうか、と僕は思ったのです。

私事になってしまいますが、
縁あって脳出血の後遺症の少年の治療をしているのですが、
(諸先輩方に助言いただいたおかげで、
かなりの改善をしてきています。感謝)
僕がいちばん悩んだのは、
(わからないながらも)彼の身体感覚を
どう自分が理解するのかということでした。
そしてそれは今だに続いているのですが、
彼の治療にもインスパイアされるところが多く
読んで良かったと思いました。

あるいは、側弯症の患者さんが
「普通の人の動きと違うと思っちゃうと、
余計に緊張して身体が動かなくなってくる」
と言うのをより理解できるようになり、
助言できるようになりました。

実は、この本の装丁は
天才・祖父江さんで、装丁、挿絵だけでも買う価値あり?かも。

第9回新潮ドキュメント賞
『リハビリの夜』熊谷晋一郎著 
2009年12月 医学書院刊

http://www.youtube.com/watch?v=WJ0aAxmMbNo

2010年09月29日 鍼灸について

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