東雲銀鍼ものがたり
毛鍼がマイブームである。
「操体法」の橋本敬三先生が毛鍼の使い手であることを、
昨秋、お寺の勉強会であらためて知った。
操体法の本は数冊持っていたけど、
なるほど、読み返してみると毛鍼についての記載がかなりある。
そのなかで、『誰にもわかる操体法の医学』(農文協)P147に
「(略)私は浜松市東雲本家特製の銀製毛鍼に限って用いている。〜」。
(『漢方と漢薬』S12/12)とある。
ん、浜松つうと浜松か。いま住んでいるとこじゃん。
アンテナを立てている時は、チャンネルの繋がり方が早い。
鍼道具を買っている地元の医療機器屋さん、
H器械店の社長から
「品物入ったんで取りにきてください」と電話が入った。
ぜひ東雲の鍼のことを聴いてみようと足を運んだ。
「しののめ、という鍼が浜松にあったそうなんですが」
「あ、ウチだよ」
いとも簡単に答えに行き着いた。
「ちょっと待っててね」と社長が奥から取り出してきたのは、
東雲名義の昔のお手製の鍼。
「愛知静岡でね、ウチしかなかったんですよ、鍼つくっているの。
浜松でね乗用車が3台しかない時代に、
ここにはオースチンがあったんですよ、英国製の。
全国の盲学校にも卸していたみたいで、
少なくとも、月産 10万本以上はあったんじゃないかな。
職人もたくさん助信とか野口に寮があって住んでたけど、
ディスポが出て来るようになった頃からやめちゃって。
2年前くらいまで1人いたんだけど」
注文していた道具を引き取りに行ったお店の中で、
おしゃべり好きの社長の
セピア色の物語にしみじみと聴き入った。
そうか橋本先生はここでつくった鍼を使われていたんだなぁ、
と歴史を感じた。そして身近にリアルに感じた。
*社長が見せてくれた鍼の中で興味深いものを数点、
写真に載せてみました。
1) 「東雲硬鍼 火鍼 三号 寸六」と書かれている。
よく見られる中国製の火針とは材質形状が違う。
鍼柄は真鍮っぽいけど熱伝導率が低いのでしょうか。
ていうか、これをどういうふうに火鍼として使っていたのか、
取材、検証してみたく思いました。
2) 「銀製小児鍼」
接触鍼として使うのだと思われるのですが、
3〜4センチくらいの短い鍼。短くてかわいい。
3) 「三稜鍼」
これも同じく短いけど、鍼柄のつくり(横に筋が入っている)が素敵。
手に持つとずしりと重さがちょうどいい。
鍼先は塩野の手打ちの形状に似ている。
さてさて、帰りに社長に銀0番寸三をいただいたので、
さっそく練習せねば、と思っている次第。
2010年03月06日 鍼灸について