カメヤ鍼灸舎 のびのび
浜松にある ハリ・灸・手技療術の 東洋医学の治療所です

「覆麺」

imgphp.jpegその店は神保町の交差点から
すこし奥に入った裏道にあった。
引いてみれば普通の民家、
寄ってみるとオレンジ色に窓や扉が塗りつぶされている民家。
ここってなに?

深夜1時近く、梅の湯からの帰りに
この街の事情通、R社社主が僕らに言う。
「ここ、ラーメン屋なんだよね」
「そうですか」
「覆面のレスラーがつくってるの」
「…。(噴き出し笑)」

その店の名は「覆麺」。都会にはラーメンがよく似合う。

次の日の夕方、僕らは中の見えない
オレンジの引き戸を右に開けた。
カウンターだけの席は満杯。
黒いTシャツに、白いデストロイヤー型のマスクを被った
太鼓腹の男がひとり、ラーメンをつくっている。
よくある自販機でメニューを選ぶ。

まぜそば覆麺(汁なし)が気になったが、覆麺(醤油)を押す。
覆面=覆麺だ。
蛍光灯の明かりだけが妙に明るい静かな店内。
まだ店の空気と流儀を掴みかねている僕らに、
時々、覆面とお客の会話が聞こえてくる。

「どう?20辛」と覆面が訊く。
カウンターの横の席の大学生風が
赤く染まった汁を啜っている。
「ぜんぜん大丈夫っす。まだいけますね」

「彼ね、一番なんすよ」
と覆面が初めて僕らのほうに顔を向け話はじめる。
「会員が1万8千人いるんすよ。辛いの彼が一番」

ごちそうさまと席を立った彼に、覆面から赤いカードが手渡される。
赤いカードには銀のシールがいっぱい貼ってある。
大学生風は誇らしげにカードを手に取った。
あ、オレもカードが欲しい。

どうやら、会員制のラーメン屋に入ってしまったみたいだ。

「はい。醤油ね」と出てきたラーメンは、
海系のダシの効いた東京風ラーメン。
縮れた麺の上には、
うずたかく盛り上がったもやし(だが、二郎ほどではない)。
チャーシューは箸で触れるだけで崩れる。

うまい。
覆面だけに目がいって、覆麺の本質を見落としてはいけない。

厨房の壁を見上げると、「80%スープを飲んだら会員」との張り紙。
僕らはまだこの店の会員ではない。
カードが欲しい。
あのカードを覆面から手渡されたい。

100221_17340001.jpg果たして黒いスープを完汁し、
店を出る僕の手には黒いカードが握られていた。

「これだったらもう300gはいけますね。今日また来ます?」
一緒に完食した満面の笑みのI先生に、
「いや、今日はもういろんな意味で臨界点超えました」
と答えるのがやっとの僕だった。

2010年03月06日 店長の目利き自慢

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