カメヤ鍼灸舎 のびのび
浜松にある ハリ・灸・手技療術の 東洋医学の治療所です

悪、二題。

images-2.jpeg1)タランティーノの映画、
『イングロリアス・バスターズ』を観ました。
タランティーノ作品ではベストワンかもしれない。
2時間半があっという間だった。
前宣伝(キワモノ臭、
あるいは『キルビル』の残り香のする
黄色地のポスター)に踊らされることなく観れば、
しっかりとした戦争映画ということがわかるはずです。
* この点は日本と外国の公式サイトでも、違いが見られます。

http://i-basterds.com/
http://inglouriousbasterds-movie.com/

さて、ブラピより印象に残ったのは
SSランダ大佐役のクリストフ・ヴァルツの演技であり、
ロケセットを充分に生かした脚本の良さだった。

クロサワの『七人の侍』では
「勝ったのは我々ではない。あの百姓達だ」
という名台詞があったけど、
この映画で最後に生き残ったのは、
自らの欲求に忠実な(ある意味純粋な)プラピ扮するバスター。

一番の悪人は
国やイデオロギーや民族のためと思い込んで悪を働いた人々ではなく、
何をやっても
悪という概念がない奴(ブラピ)なのだった。

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2)吉田修一著『悪人』を
演出家のNさんにいただいて読みました。

とにかくおもしろい。読ませる。
一文のディティールにこだわるタイプの作家ではなく、
読み手をぐいぐい物語の世界に引っ張り込んでいく
(そうだ、まさに引っ張り込まれたのだ)
当代一のストーリーテラーだ。

登場人物それぞれが抱えていている悪生が
等しく突き放して描かれているのだが、
次第に何が悪なのか、というその境界はぼやけてきてしまい
美しい殺風景になっていく。
自分のなかにあるいろんな悪を針で突つかれたような、
なんとも言えない切なさが最後に残った。

それで「悪」である。
最近はボンタン長ラン(短ランでも可)
の不良学生を街で見かけなくなった。
全国(いや全世界かな)チェーンのコーヒー店に入れば
みんな判で押したような笑顔で迎えてくれます。

校舎の窓ガラスを壊してまわった(オレは割ってないけど)
世代出身だし、
いまだにパンクが好きだし、
チンピラな僕だけに、
「いい子」が妙に増えた最近の世の中には
どうも馴染めないでいます。

『悪人』を僕に勧めてくれたNさんは、
ある大学の先生をやっていて学生さんにこんな相談をされたそうです。

「死にたくなる時があるんですけど、
 私はどこかおかしいでしょうか?」
「普通じゃん。死にたくなる時だってあるさ」
「生きてて辛いんですけど?」
「オレはいつも辛いよ」
こんなことですごく悩んで相談して、
自分は普通じゃないって思ってしまうんだね
今の若い子達は、とNさんは穏やかな笑い顔をみせた。

白川静『字訓』によれば、
悪はもとの字は惡に作り、亞声。
亞は喪葬を司るものであり、
悪とはそのような凶事に臨む心情をいう【説文】、そうです。

自らのうちにある悪に気づかない
「明るい」日本人こそ、
本当の悪かもしれない、と僕は思ってます。

2009年12月01日 店長の二刀両断「世の中バカなのよ」

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