駅の南のブラジル
僕の住んでいるH市では
東海道線の線路を挟んで、
駅の南と北では街の様子が変わる。
駅の南には、かつて朝鮮系の人たちが住んでいた。
夜の蝶が川沿いに立っていて、連れ込み宿もあった。
いま高架下をくぐって駅の南に行くと、
そこにはリトルブラジルがある。
30歳を目前にして、こんなことを妄想したことがある。
ここからいちばん遠いところはどこだろう。
そこはブラジルじゃないか。
だって日本から直線で穴を掘り続けて地球を突き抜ければ、
(地底人の国がないという前提ならば)
きっとブラジルにたどり着くもの。
条口から承山への透刺よりも、長い距離だ。(笑)
いちばん遠いはずのブラジルがこんなに近くにある。
「セルヴィツー」という名前の
ブラジル食堂に足を運んだ。
セルフサービスのカフェテリアで「ボアタールデ!!」。
大きな皿に、
フュージョアーダもシェハスコもサラダものせて
1000円なり〜。
車産業の下請け企業の多い土地柄で、
90年代から労働力を提供してきた在日ブラジル人の皆さんも
もう三世が大きくなっている。
いつのまにか群馬の太田市を抜いて
在日ブラジル人の数がいちばんになった。
「セルヴィツー」にはポルトガル語が飛び交い、
ブラジル人で溢れかえっていた。
田舎はみんな同じであるのを好む傾向がある。
人と変わっていることは許されない。村八分の対象だ。
でもいろんなものが、一つのお椀のなかに
入っているガンボスープのほうが僕は好きだ。
そのほうが健全じゃないか。
僕は、「セルヴィツー」のレジにいた
働き者の 若いブラジル女性店員に見とれていた。
だからもう一つのガンボスープ、
鍼灸学校のある無国籍な大久保の街は好きだった。
夜の蝶が夜間部の学校のトイレに入って来て
用を足していたので、
入口がロックされたとの逸話もある。
冬のタチンボは冷えるのだ。
2009年01月13日 店長の二刀両断「世の中バカなのよ」